お客様の声

マンション建替え事業「エクアス小石川林町」菊地順子様

林町住宅マンション建替え組合理事長(当時) エクアス小石川林町お住まい 菊地順子様

画像 エクアス小石川林町中庭にて 左から弊社代表取締役社長 松下和正、菊地順子様

2010年、弊社施工によりにあたらしく生まれ変わった「エクアス小石川林町」の屋上には、建替え前の林町住宅の間取りがタイルでデザインされています。
建替えるまでの53年間、同じ団地に住むということは、どんな感じがするのだろう。
子ども時代を過ごし、結婚、子育て、子どもの独り立ち、孫の誕生・・・・・・
団地は人生そのものに思えてきます。
建て替え事業から6年、弊社代表取締役社長 松下和正が建替え理事長の菊池順子(まさこ)様に当時のお話を伺います。

株式会社松下産業 代表取締役社長 松下和正

敷地の桜がきれいに咲いていますね。

林町住宅マンション建替え組合理事長(当時) 現エクアス小石川林町お住まい 菊地順子様(以下、菊地様)

この桜の木は、林町住宅の敷地の桜を接木して、工事中、別の場所で保管していたものです。

解体工事で残念ながら伐採した桜の木は、幹をベンチに加工し、中庭に設置しました。
私たち建設会社ができることはなにか。
林町住宅とともに歩んできたオーナーたちのおもいによりそうこと。
ここから松下産業としてのプロジェクトが始まりました。

画像 エクアス小石川林町の中庭 手前にあるのが桜の幹のベンチ(2015年に撤去)

松下

いかがですか、住み心地は。

菊地様

私の家の中は、夏は風が抜けて涼しいし、冬は気密性が高いから床暖房だけで暖かい。
スケルトン・インフィル工法で、間取りをそれぞれが自由に設計できたのも満足しています。トイレを中心にした間取りは、今年4月に100歳になった母にも、とても便利です。
それから、お客様は、中庭に驚かれるみたいです。

松下産業

建物全体に、住んでいる人の品位が伝わりますよね。
屋上の林町住宅の間取りのタイルも、ここの歴史を大事にしているのが伝わります。

画像 林町住宅の全景
画像 建替え後のエクアス小石川林町の屋上 林町住宅の間取りをタイルでデザインした

ここで、林町住宅の歴史について振り返ります。

 小石川植物園に近い文京区千石「林町住宅」は1956年、東京都住宅供給公社によって分譲された団地型のマンション。
ゆったりとした敷地に建物が2棟平行に建ち、住戸数54戸、約45平米、同一の3Kの間取りです。50年以上住み続けた方や、ここで生まれ育った方が住んでいました。
 高度成長期に先進的な住まいとして憧れの的だった「団地」ですが、今や老朽化が進んでいます。
耐震性が不足しているマンションは約106万戸といわれ、共用部の管理問題や、少子高齢化と社会構造の変化の対応の遅れから、都市部のマンションのスラム化も深刻な問題になっています。

 林町住宅も、老朽化が目立つようになりました。水道管は腐食が進み、高齢を迎えた住民の方には、エレベーターがないことも悩みの種。空き部屋が目立つようになりました。
返済期間は50年。2005年にその返済を終え、住民たちに全ての権利が移ったことから、管理組合をつくって管理は自分たちで行なわなければならない。
 老朽化の進んだ住宅をどうやって修繕するか、管理組合は総会を開き、アンケートをとりました。

 結果は「五年を目途に建替える」でした。


ここからは、約5年の事業です。年表にまとめると以下の通り。


2005年4月 管理組合総会にて建替え・大規模修繕のアンケート決議、実施
同年7月 建替え準備委員会を発足
2006年4月 建替え推進が決議され「マンション建替え円滑化法」を活用し事業スタート。
設計は、3社コンペで「山本浩三都市建築研究所」に決定
参加組合員には「某デベロッパー」を決定
2007年4月 建替え決議
同年9月「某デベロッパー」が事業を撤退
同年12月 建替え参加組合員を当社グループ会社「アーバンアセット研究所」に変更
施工会社は4社から「松下産業」に決定
2008年5月 転居、解体工事着手
同年8月 新築工事着手
2010年3月 約18ヶ月の工期を終え「エクアス小石川林町」として竣工、引渡し
同年5月 清算、建替え組合解散

紆余曲折、怒涛の5年だったと想像します。

松下

マンションの建替えは、一般的に約10年かかるといわれる中で、5年で建替え完了しました。成功の秘訣はどこにあるのでしょうか。

菊地様

なにより、タイミングがよかった。50年の償還で住民たちに、すべての権利が移った時期だったから。 これが建替えのきっかけになりました。
組合員も同じ敷地で育った幼なじみばかり。そろそろ定年を迎えた人もいて、組合の活動がスムーズでした。
それに、林町住宅は長年、共用部の管理を住民同士で自主管理してきたから、コミュニティが形成されていたことも大きいと思います。

画像 中庭での林町住宅お別れの会
画像 建替え理事会の様子

松下

意見を取りまとめる菊地理事長の包容力ではないですか。

菊地様

それはどうか分からないけど(笑)
小さい頃からみんなに『まこねえちゃん』と呼ばれる仲だったからかしらね。

他に成功の鍵は、菊地様が建替え後に出版された『マンション建替え奮闘記』の中で、住民のコンピューター・リテラシーの高さを上げています。
理事会の開催案内、出欠などはメールなどでやりとりし、議事録はワードで作成。 スケジュール管理や合意形成がスムーズに進んだそうです。


建設工事がスタート前に、思いも寄らぬ出来事が続発しました。
施工当時、世間では2005年11月構造計算書偽造問題が騒がれ、確認申請が厳しくなりました。文京区の建築確認申請に時間が掛かりました。
確認済証が交付されるまで、現場は着工できません。
さらに急激な物価の値上がりで、建築資材費が高騰。わずか1ヵ月で積算見積額が1億円近く上がりました。

菊地様

経済情勢の変化にひやひやでした。
竣工のタイミングで物価の変動がどうなるかまでは、なかなか読めないでしょ。
おかげさまで、工事中盤にはデフレなどの影響で、諸材料費が下がったから、建築費はほぼ予定通り。安堵しました。

他には、建替え組合のデベロッパーが撤退したことも上げられますが、結果的に松下産業との出会いとなりました。撤退後は、弊社のグループ会社アーバンアセット研究所が組合員として参加しました。
建設工事がはじまると、事業は軌道に乗り始めます。

松下

新しい住民の方との関係はいかがですか。

菊地様

入居するときに、これまでの林町住宅の風土を守ろう、ここに住む人はみんなであいさつしよう、と決めました。後から入居を決めた方のことばでは、住民の小学生が元気に挨拶してくれたことが、入居の決め手だったとか。

松下

住民同士が挨拶するということはとっても重要なことです。挨拶する集合住宅は、コミュニケーションができていて、共有部分の管理が行き届いています。

菊地様

夏は屋上で納涼会、冬は餅つき、庭の草取り活動をしていて、住民間のコミュニケーションがあります。
子どもが増えて、自転車置き場が足りなくなったのは想定外でした。

松下

住民の皆さんは、生まれ変わった『エクアス小石川林町』をどのように感じているでしょうか。

菊地様

みんな建替えてよかったとおっしゃっています。
設計の山本浩三都市建築研究所 山本先生は、住む人のことを一番に考えてくれました。
スケルトン・インフィル工法を採用して、全住戸、自由設計です。
それぞれ好みの間取りを、何度も打合せをして時間をかけたから、みんな満足していると思います。
スケルトン・インフィル工法で自由設計ができるから、世代やライフスタイルが変わっても、間取りを変更できます。住み継ぐことができるから不安はありません。

松下

この建物はメンテナンスのしやすさがあります。
竣工してから6年経ちますが、大きな不具合はなく、メンテナンス費用が掛かっていないと伺っています。
1戸の広さも様々あって、多様性も確保していますね。

松下

弊社の施工管理について、どのようなご感想をお持ちですか。

菊地様

いつ行っても、現場がきれいなことに驚きました。
整理整頓ができていて、目が行き届くから、無事故で竣工を迎えられたのでしょう。

松下

ありがとうございます。松下産業の現場はどこもきれいだと自負しています。
私はというと、自分の部屋がきれいだと落ち着かない(笑)

画像 解体工事の様子
画像 地下工事の様子

松下

現場はとにかく、安全対策を万全にしました。近隣に幼稚園、小学校があるスクールゾーンなので、警備員を増員して対応しました。

菊地様

300メートルに5,6人の警備員を配置されていて、見たことがない光景でした。

松下

学校といえば、当社では毎年、地元の中学校3校から職場体験の受入れをしていて、林町住宅の斜向かいにある文京区立第十中学校の生徒が、工事中の現場で測量など体験しました。
文京区立林町小学校を卒業した生徒が職場体験に来て、当時の工事中の様子を覚えている子も。こちらに遊びに来たことがある子もいましたよ。

画像 中学生職場体験 現場の朝礼から参加
画像 墨出し(コンクリートに印をつける作業)を体験する中学生

松下

さて最後に、建替えを経験された理事から見て、行政や制度についてどのようにお感じですか。

菊地様

工事が始まる前、工事車両のルート確保に困難を極めました。その時、行政には、近隣住民との調節にもっと関わって欲しいと思いました。
近隣説明会など、近隣との話し合いに立ち会うことがなかった。
行政は中立な立場と言うけれど、何もしないことが『中立』ではないのでは、と感じました。

松下

建替え事業には近隣と行政も関わり、近隣の方々、建替え組合、建設会社の三者が話し合う場が必要ですね。
菊地様、本日はお忙しい中ありがとうございました。

マンション建替え円滑化法の活用した事業がこれからも続くためには、建替え組合ばかりでなく、行政などの手厚い支援も必要です。

そして何より、マンション建替えの成功のかぎは、普段からの住民同士のコミュニケーション。
このインタビューを通して、あらためて感じました。
マンションは購入したら終わりではなく、購入してからが「はじまり」なんだと。

画像 エクアス小石川林町 エントランス前にて

(編集 広報担当)

参考「マンション建替え奮闘記」(林町住宅マンション建替組合理事長 菊地順子著)
取材:2016年4月